地域における多文化共生は実現されつつあるか

総務省は「多文化共生プラン」を推進している。「少子高齢化による労働力不足」や「地方の人口減少」という背景のもと、外国人を地域に受け入れていこうという姿勢なのだろう。外国人労働者や技能実習生、留学生が増加し、これらの人々に地域で長く暮らしてもらうために、「共生」が重視されてきているのだと思う。しかし、島国である日本の国民にとっては、外国人との共生を難しく感じる人も少なくない。

それでも私は、地域における多文化共生は実現されつつあると感じている。そのように思わせてくれたのは、現在ロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平選手の存在である。

もちろん、大谷選手が活躍しているのはアメリカであり、ロサンゼルスの多文化共生の象徴のように見えるかもしれない。だが、私が注目したいのは、日本に住む私たちが彼のふるまいやチームの様子を通じて、多文化社会に触れ、異なる文化や価値観を理解しようとしていることだ。

たとえば、大谷選手の実力だけでなく、日本人らしい謙虚で礼儀正しい振る舞いが現地で受け入れられ、子どもたちの憧れの存在になっていることを、多くの日本人が誇らしく感じている。また、先日の故意死球や報復死球といった、かつてのメジャーに見られた悪習に対して、大谷選手が毅然と否定的な立場を示し、周囲もそれに従った場面は、異なる価値観が尊重し合う一つの形だといえる。

さらに、今年のメジャー開幕戦が日本で開催され、来日した選手たちが相撲や忍者体験、人力車などを楽しむ様子がテレビで放映された。日本の社会がそうした選手たちを温かく迎え入れ、積極的に文化を紹介していたのも印象的だった。これは一方的な「おもてなし」ではなく、文化の相互交流としての共生の一例だと思う。

日本はかつて、外国文化に対して閉鎖的だといわれることもあった。しかし今では、メジャーリーグ中継などを通して、国籍や文化を越えて努力する姿に共感する人が増えている。私はそうした日常の中に、多文化共生の芽を感じている。